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Nutanixのコンセプトを体現したハイパーバイザー「Nutanix AHV」とは

ニュータニックス・ジャパン / ソフトウェアテクノロジーセンター テクニカルエバンジェリスト

HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)は、旧来の仮想化基盤で用いられていた「サーバー・SAN・共有ストレージ装置」による3Tier(3層型)のインフラを、ソフトウェア技術で置き換えることで、システム構成や運用管理をシンプル化し、IT基盤をより柔軟でスケーラブルにします。今回の記事では、仮想化基盤における中核となる「ハイパーバイザー」に着目して解説します。

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◎実は珍しい、多くのハイパーバイザーに対応するHCI

HCIは、仮想化基盤向けのソリューションですので、必ず何らかの「ハイパーバイザー」と組み合わせて利用することになります。

どのハイパーバイザーと組み合わせられるかは、HCI製品ごとに異なりますが、多くのHCI製品では1種類、または2種類のハイパーバイザーに対応しています。ハイパーバイザーの追加機能としてハイパーバイザー自身に組み込まれて提供されるHCIは、当然1種類のハイパーバイザーにしか対応しません。ハイパーバイザーとは別個に独立したコンポーネントとして実装されているHCIでは、vSphereとHyper-Vに対応、といったように2種類のハイパーバイザーに対応していることもあります。

NutanixのHCIは後者の形で、ハイパーバイザーとは別個に独立したコンポーネント(CVM)で実装されていますが、vSphereとHyper-Vに加えて、Nutanix製のハイパーバイザーである「Nutanix AHV」も含めた3種類のハイパーバイザーが選択でき、ユーザーの幅広い要望に対応できるようになっています。(※Citrix Hypervisor(旧称Citrix XenServer)にも一部の旧世代HWで対応していますが、新規HWでの対応は終了しています)

Nutanix AHVは2015年に提供が開始され、ハイパーバイザーとしてはかなり後発の製品であるにも関わらず、Nutanix NXシリーズ(Nutanix自社ブランドで提供されるHCIアプライアンス)の47%のノード(直近1年間の実績により算出)がNutanix AHVとの組み合わせで導入されており、世界最大のNutanixユーザーも大規模環境をすべてNutanix AHVで構成しています。ここでは、急速な広がりを見せるNutanix AHVの特長、機能、ユースケースなどについて紹介します。

◎HCIによるシンプル化はバックアップにもおよぶ

◎圧倒的に存在感の薄い(?)ハイパーバイザー

Nutanix AHVの特長は、Nutanixのコンセプトである「インビジブル」(直訳すると「目に見えない」、意訳すると、「もはや意識する必要もないくらい手離れがいい」)を体現している点です。ほかのハイパーバイザーとは異なり、NutanixのHCIに組み込んで利用することを前提に開発されているため、ハイパーバイザーそのものの存在を意識する必要性がなく、ある意味では実に存在が薄く、Nutanixの管理UIである「Nutanix Prism」へ上手く溶け込んでいます。そのため、ほかのハイパーバイザーを使ったことがある人であれば、大きな学習コストを掛ける必要もなく、簡単に習得できます。

Nutanix AHVには、専用の統合管理サーバーも必要なく(相当の機能がCVMに組み込まれているため)、操作は殆どがNutanix Prismで完結します。クラスター構成は何もしなくとも自動的に、Nutanixクラスター(=分散ストレージの構成範囲)と同一のノードで組まれますし、HA(高可用性)機能も初めからオンです。仮想ネットワークも各ノード別に設定する必要はなく、Nutanix Prismで一度VLANを作成すれば自動的に全ノードのNutanix AHVに反映されますので、1台1台を個別に設定する必要はありません。

また、NutanixのHCIを購入したユーザーであれば、Nutanix AHVは追加コストなしで利用できる点も、Nutanix AHVの利用率急増に一役買っています。ほかのハイパーバイザーを利用するためのコストが丸ごと浮く形になるので、Nutanixの導入をお考えの際には、ぜひ、Nutanix AHVの利用も併せてご検討いただくことをおススメします。

◎必要十分以上に揃っています

たとえ追加コストなしでハイパーバイザーを利用できるとしても、十分な機能を備えていなければ安物買いの銭失いとなってしまうでしょう。Nutanix AHVの開発には、登場からの5年間で急速な投資が行われ、殆どのユーザーからの要件に対応可能な機能群を備えるまでになりましたので、決して「安物買いの~」とはなりません。

図:Nutanix AHVの機能強化ポイント

図:Nutanix AHVの機能強化ポイント

Nutanix PrismからゲストVMの作成やコンソールアクセスができるのはもちろんのこと、仮想化基盤では必須といえるHA(高可用性)機能も備えていますし、先ほども書いたとおり初めからオンになっています。また、ADS(Acropolis Distributed Scheduler)というゲストVMの自動配置機能も追加費用なしで利用可能です。vSphereでいうDRSのように、負荷状況を監視してゲストVMを自動でライブマイグレーションすることでホストの過負荷を回避する機能ですが、DRSとは異なりCPU・メモリだけでなくディスクI/Oの状況もチェックした上で配置を最適化し、Nutanixクラスター上のすべてのVMが安定的なパフォーマンスを発揮できるようにします。こちらも初めからオンになっています。

既存の仮想化基盤を運用しているユーザーであれば、ゲストVMをどのようにしてNutanix AHV上に移行するかもポイントになってきます。Nutanixは、「Nutanix Move」という無償の仮想マシン移行ツールを提供しており、既存のvSphereやHyper-VのゲストVM、さらにはAmazon EC2のインスタンスをNutanix AHVに移行可能です。また、移行の際には、事前にゲストVMを停止することなく、ゲストVMを稼働させたままバックグラウンドでデータ転送することができます。データ転送中に発生する差分データのトラッキングも行っており、適時、差分転送を自動で行います。なお、「カットオーバー」という機能も備えており、任意のタイミングで「移行対象ゲストOSへのAHV仮想HW用デバイスドライバーのインストール」「移行元ゲストVMのシャットダウン」「最終差分の転送」「移行先ゲストVMの起動」といった、移行作業における終盤のステップを、ワンクリックで行うことも可能です。

図:Nutanix Move

図:Nutanix Move

さらなる付加価値として、Nutanix AHVに対してネットワークセキュリティ機能を追加する「Nutanix Flow」も提供しています。Nutanix Flowを利用するには別途ライセンスが必要ですが、これを使うことで「マイクロセグメンテーション」という機能が追加されます。マイクロセグメンテーションとはファイアウォールの一種ですが、ネットワークセグメント間の境界を保護するファイアウォールアプライアンスや、ゲストOSに組み込まれているファイアウォール機能とは異なり、ハイパーバイザーの仮想スイッチレイヤーで制御を行います。これにより同一セグメント内での通信制御を、ほかのファイアウォールの設定状況に依らず、仮想化基盤の管理者権限で確実に適用することができます。

図:マイクロセグメンテーションの例

図:マイクロセグメンテーションの例

◎AHVの使いどころ・使われどころ

このように、後発のハイパーバイザーでありながら、必要な機能群を備えたNutanix AHVですが、どのようなケースで利用されているのかを解説します。

まずそもそも、Nutanix AHVは特定のユースケースに偏った使われ方をしているわけではありません。NutanixのHCI全般については、5年ほど前にはVDIの基盤として使われる比率が高かったのですが、現在では様々なワークロードが混在するプライベートクラウド環境や、ミッションクリティカルな業務アプリケーションにデータベース、開発・テスト環境、そしてVDIなど、いわゆる「仮想化」された環境で広く採用されています。

なお、Nutanix AHVと組み合わせるVDIについては、Citrix Virtual Apps and Desktops(CVAD、旧称 Citrix XenApp and XenDesktop)が大多数を占めます。NutanixとCitrixは、アライアンス関係にあり、CVAD on AHVやCitrix CloudとAHVの連携を行うためのプラグインが提供されているほか、Citrix GatewayやADCの仮想アプライアンス版をNutanix AHVで動作させることが可能となっています。Citrix以外では、Nutanixが提供するDesktop as a Service(DaaS)であるNutanix Xi Frameとの組み合わせも可能となっています。VMware Horizonについては、ハイパーバイザーがVMware vSphereに限定されるため、Nutanixを基盤とする場合もvSphereでの利用となります。

これらのワークロード観点でのユースケース以外に、Nutanix AHVには重要な役割があります。それは、Nutanixクラスターに「ストレージ専用ノード」を拡張する際の利用です。Nutanixクラスターにストレージ容量を追加したい場合、基本的には新しいノードを追加する形での対応となります。ストレージ専用ノードとは、CPUやメモリの搭載をCVMの稼働に必要な最小限のものに抑えつつ、ディスクについては十分な容量を搭載したノードで、ゲストVMの稼働はできないように特別な設定が行われます。Nutanixクラスターにおいては、ほかのノードがvSphereやHyper-Vであっても、Nutanix AHVで動くストレージ専用ノードを混在できるようになっています。これにより、vSphereやHyper-Vのライセンスを追加することなく、Nutanixクラスターのストレージ容量のみを拡張することができます。

さらに、Nutanixが提供するDR(Disaster Recovery:災害対策)用のクラウドサービスであるNutanix Xi LeapもNutanix AHVをベースに構成されています。Xi Leapは、Nutanixの遠隔レプリケーション用サイトをクラウドサービスとして提供しますが、オンプレミス側のNutanixクラスターはNutanix AHVだけでなくvSphereでも利用可能です。実はNutanixでは以前から、オンプレミスのNutanixクラスター間で利用可能なCross-hypervisor DR(異種ハイパーバイザー間DR)という機能を提供しています。この機能を活用することで、ハイパーバイザー費用を抑えながらDR環境を構築することが可能です。

 

図:Nutanix Xi Leap

図:Nutanix Xi Leap

◎Nutanix AHVはイイけど、だけじゃない

ここまでご紹介したように、無償でありながら必要な機能群を備え、多くのお客様に採用いただいているNutanix AHVではありますが、Nutanixとしては、お客様がほかのハイパーバイザーを選択することを排除するようなことはありません。なぜなら、アプリケーションによって、ハイパーバイザーの選択肢が制限されるケースもあるためです。また、サポートがすでに終了しているようなレガシーOSや、比較的マイナーなOS、仮想アプライアンスへの対応については、既存のハイパーバイザーが一日の長であるのも事実です。

Nutanixとしては、Nutanix AHVを成長・成熟させていく取り組みを続けていくのはもちろんのこと、お客様がどのハイパーバイザーを選択されたとしてもベストなHCIであるべく、データの堅牢性に優れ、安定的なパフォーマンスが発揮でき、運用の効率化に役立つように、品質の向上や機能の拡張に努めています。

また、Prism Centralを使えば異なるハイパーバイザーのNutanixクラスターでも一元管理が可能ですし、NutanixのHCI以外の周辺ソリューションについても、マルチハイパーバイザーに対応したものが多くなっていますので、ハイパーバイザーを限定せずに幅広いユースケースでNutanixの利用をご検討いただけますと幸いです。

その他のリソース

Nutanix探検隊 第3話 しっかり押さえておきたい『AHV』のはなし

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