結論と提言
第 7 回年次 Nutanix Enterprise Cloud Index の調査結果から、アプリケーションのコンテナ化と生成 AI ソリューションの急速な普及が、エンタープライズの IT 戦略を大きくシフトさせていることが明らかになった。調査対象の半数以上の組織がアプリケーションを完全にコンテナ化しており、これが標準的な手法になりつつある。コンテナ化によって、ハイブリッド・マルチクラウド環境全体でスケーラビリティ、ポータビリティ、アジリティが向上している。コンテナ化と生成 AI は密接な関係にあり、新たなワークロードの需要を満たすには、クラウドネイティブの原則を取り入れることが重要である。
また、今回の調査結果は、生成 AI の導入がもたらす課題と機会の両方が明らかにしている。企業は、生産性向上、自動化、イノベーションのために生成 AI を活用したいと考える一方で、データセキュリティ、コンプライアンス、IT インフラのモダナイズなどの重要な課題に直面している。さらに、多くの企業が、生成 AI を効果的に導入・管理するために必要なスキルやガバナンスの不足を認識している。そのため、企業はビジネス戦略を明確にし、技術と整合性を取る必要がある。生成 AI を最大限に活用するには、IT トレーニング、人材獲得、先進的なインフラへの投資が不可欠であり、同時にその実装に伴う複雑さへの対処も必要である。
本レポートは、アプリケーションとインフラのモダナイゼーションには包括的なアプローチが重要であることを強調している。セキュリティ強化を優先し、人材育成を推進し、Kubernetes などのオーケストレーションプラットフォームを活用することで、組織は生成 AI のワークロードを開発から本番環境へとシームレスに拡張できる。エンタープライズが戦略をさらに洗練させるなか、生成 AI を自社の IT エコシステムにどれだけシームレスに統合できるかが、今後のイノベーションのカギとなる。
Nutanix は生成 AI アプリケーションの
デプロイメントとセキュリティをシンプルにします
エンタープライズ内における生成AIアプリケーションの台頭
今回の ECI レポートでは、生成 AI ソリューションの導入状況や投資の優先順位、現段階で組織が実現している主なメリットの把握に焦点を当てている。
調査結果によると、回答組織の大多数(85%)が AI 戦略を既に策定しているものの、戦略の実施度合いにはばらつきが見られる。一方で、生成 AI 戦略を開始していないと回答した組織はわずか 2% であった。
エンタープライズ生成 AI 戦略の策定と実施の現状
戦略を策定済みで、積極的に実施している
戦略を策定済みだが、まだ実施していない
戦略の策定の初期段階である
戦略の策定にまだ着手していない
戦略を策定する予定はない
図4:エンタープライズ生成 AI 戦略の策定と実施の現状
15%
生成 AI 戦略を既に策定している、と回答した組織の割合。
多くの組織が既にエンタープライズ生成 AI の戦略を策定していると回答している。しかし、生成 AI がどのように組織の上位のビジネス目標や戦略をサポートするのかは必ずしも明確ではない。重要なのは、「AI を使うこと」自体が目的とならないようにすることである。AI イニシアチブと AI ソリューションは、常に大きなビジネス目標と結びつけ、導入の成功(最終的には ROI)を長期的に測定・評価できるよう、測定可能な指標を設ける必要がある。
今回の ECI 調査の回答者は、業務において生成 AI がサポートする目標や戦略として、生産性の向上と自動化、効率化、イノベーションの促進を上位に挙げている。回答者のうち、生成 AI は包括的なビジネス目標や戦略をサポートしない(できない)と回答したのはわずか 1% であった。
生成 AI がサポートする主要なビジネス目標と戦略
生産性の向上
自動化・効率化の促進
イノベーションの促進
顧客維持とサポート
運用コストの削減
従業員のオンボーディング
業界における差別化
生成 AI では自社のビジネス目標をサポートできない
図5:生成 AI がサポートするビジネス目標と戦略の上位
生成 AI のアプリケーションとワークロードの導入については、半数以上の回答者(53%)が、生成 AI をベースとしたカスタマーサポートや顧客体験のソリューション(例:カスタマーサポート用のチャットボットの改善、顧客からのフィードバックの改善、顧客体験のパーソナライズ、本人確認など)を活用していると回答した。しかし、回答者は今後 1~3 年の間に生成 AI ベースのサイバーセキュリティや不正検知、データ損失防止のソリューションの導入に重点を移すと回答しており、この状況は変わる可能性がある。
生成 AI のワークロードの活用状況(現在と今後 3 年以内の比較)
顧客サポートや顧客体験の向上
サイバーセキュリティと不正検知
AI コンテンツ生成ツール
コード生成やコードの共同作成
その他
生成 AI を活用していない/活用するつもりがない
現在
1~3 年以内
図6:生成 AI のワークロードの活用状況(現在と今後 3 年以内の比較)
また、生成 AI ソリューションとワークフローは単体で実装されるものではないことを認識しておく必要がある。エンタープライズ向け生成 AI ソリューションの効果を最大限に引き出すには、より広範な IT エコシステムへのシームレスな統合が不可欠である。これには、他のビジネスクリティカルなワークロードで使用されるエンタープライズレベルの耐障害性、セキュリティ、Day 2 運用に加え、さまざまなデータソースへのセキュアかつ信頼性の高いアクセスが含まれる。そのため、生成 AI ベースのワークフローの成功には、さまざまな技術やサービス(例:コンテナ化)のサポートに投資する必要がある。今回の調査対象回答者の半数以上が、生成 AI アプリケーションとワークロードをサポートするために自社の IT インフラと IT トレーニングに追加投資が必要であると回答している(IT インフラ:54%、IT トレーニング:52%)。
生成 AI アプリケーションの改善に向けて投資が必要なサポート領域
IT インフラ
IT トレーニング
サイバーセキュリティ
IT 人材の雇用
データ管理
データガバナンス
アプケリーション開発
図7:生成 AI アプリケーションの改善に向けて投資が必要なサポート領域
スポットライト:企業は生成 AI への投資から十分なリターンを得ているのか?
メディアの喧伝と AI ツールやサービスの商用化により、AI 技術に対するエンタープライズの関心はこの 2 年間で新たな高みを見せている。2023 年の「Nutanix レポート:エンタープライズ AI の現状」では AI の「ハネムーン期」がもたらすインパクトを調査し、AI ソリューションのアーリーアダプターの多くは、テクノロジーの評価と導入において予算の障壁をほとんど経験しないであろうことを報告した。
今回の調査結果によると、回答者の 90% が生成 AI とモダンアプリケーションの導入に伴い IT コストの増加を予測している。いずれハネムーン期が終わりを迎えると、AI プロジェクトや技術に関連する予算や支出は、他の IT ポートフォリオと同程度の水準を求められるだろう。
さらに、生成 AI への投資とビジネス成果についての傾向をより深く理解するために、生成 AI プロジェクトにおける ROI についても調査した。その結果、半数以上の組織(52%)が、生成 AI のワークロードを開発から本番運用へ拡張するうえで、所有コストや ROI の可視性が課題となると回答している。
また、今後数年間の具体的な ROI 結果の予測を尋ねたところ、以下のような回答が得られた。
今後 1 年間の生成 AI プロジェクトの収支は、均衡するか赤字になる見込み
今後 1~3 年間の生成 AI プロジェクトの収支は、均衡するか赤字になる見込み
この結果から、今後 12 か月以内で生成 AI プロジェクトへの投資に対するリターンを達成できると予想している組織は 56% に過ぎないことがわかる。しかし、 70% の組織はその後 2~3 年でリターンを見込んでおり、大半の組織が 2026 年~2027 年のうちに何らかの形で生成 AI の成果を得られると期待し、予算を組んでいることが明らかとなった。これは IT ソリューションの観点から見ると、比較的余裕のある ROI スケジュールといえる。
13%
今後 2~3 年間で生成 AI 投資のリターンを見込んでいる、と回答した回答者の割合。
では、生成 AI の ROI に関する期待は、他の IT ソリューションとは異なるのだろうか。今回の調査結果は、この ROI の認識についてさらに深いインサイトを提供している。以下は、「組織内で生成 AI の導入と予算に最終的な責任を負うのは誰か?」という質問に対する回答結果である。
自社において、生成 AI の導入と予算の最終責任を担うのは誰か?
最高経営責任者(CEO)
最高情報責任者(CIO)
最高技術責任者(CTO)
最高データ責任者(CDO)
最高 AI 責任者(CAIO)
最高財務責任者(CFO)
最高イノベーション責任者(CINO)
最高執行責任者(COO)
部門横断的な生成 AI チーム
生成 AI リソースを扱う各事業部門
CFO が、生成 AI の導入に関する意思決定の責任者として、CTO、CIO、CEO、CDO、CAIO に次いで 6 位にランクインしていることがわかる。この結果は、生成 AI プロジェクトおける組織の意思決定プロセスに関してさらなるインサイトを提供している。財務的な結果は評価段階では重要である一方で、生成 AI の導入における最終的な決定は主に財務の範疇ではないと認識されていることがわかる。
また、前向きな点として、今回の ECI 調査では「自社の生成 AI の ROI を長期(1~3年)にわたって測定するのに苦労している」と答えたのはわずか 2% に過ぎなかった。これは、大多数の組織は少なくとも ROI の目標と測定を念頭において生成 AI プロジェクトを実施しており、そのソリューションの価値を長期的に評価するために必要な適切な測定基準を確実に収集していることを示している。すなわち、ROI のタイムラインに関わらず、生成 AI プロジェクトに関する財務的な意思決定に必要なデータは既に整備されていることを意味している。
開発環境から本番環境へ:生成 AI ワークロードの導入とライフサイクルについてのインサイト
モダンアプリケーションスタックやクラウドネイティブアプリケーションスタックと同様に、開発者はスケーラブルで信頼性の高いインフラ上で、リソースやサービスに迅速かつ容易にアクセスする必要がある。これには、インフラ・アズ・ア・サービス(IaaS)エコシステム(例:コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング)と、プラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)エコシステム(例:AI 推論エンドポイントサービス、サービス、開発・テストツール、サーバーレス機能、マルチクラウドオーケストレーションツール)の両方の要素が含まれる。
コンテナ化されたアプリケーションの大半がクラウド上で誕生するが、コストやガバナンスなどの理由から、異なるパブリッククラウドやプライベートクラウド、エッジ環境、マネージドクラウドへの移行が必要となる場合がある。しかし、現在利用しているクラウドから別のクラウドへ(例:Azure や Google で利用している IaaS や PaaS のリソースを AWS でも同じように利用するなど)、またはオンプレミスへスムーズに移行できるマルチクラウド対応のアプリケーションはほとんど存在しない。また、多くのステートフルなクラウドネイティブアプリケーションは、クラウド間でデータの保存や保護、処理を行うための一貫したデータサービスが不足している。こうした複雑性は、現代の IT 部門が真にポータブルなマルチクラウドアプリケーションを構築するうえでの課題の 1 つに過ぎない。
新たに登場した生成 AI アプリケーションも上記のようなインフラ課題と無縁ではない。今回の ECI 調査の結果によると、ほぼ全ての回答者(98%)が生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境に拡張する際に課題に直面している。特に、生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境に拡張する際に組織が直面する課題として最も回答の割合が多かったのは、既存の IT インフラとの統合である。
生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境に拡張する際に直面する課題
既存の IT インフラとの統合
AI のデプロイメントと運用に必要なスキルの欠如
所有コストや投資利益率(ROI)の可視性
規制及びコンプライアンス面の障害
計算リソースの制限
課題に直面したことはない
図8:生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境に拡張する際に直面する課題
18%
生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境へ拡張する際に課題に直面している、と回答した組織の割合。
生成 AI ワークロードの実行に伴うインフラ関連の課題に加えて、生成 AI アプリケーション自体にも、データ処理やモデル開発、トレーニング、保守などの独自の課題がある。調査では、回答者の 79% が生成 AI モデルの開発から本番までのライフサイクルを管理するプロセスやツールを今後導入する予定であると回答している。しかし、現時点で実際に導入している組織の割合はもっと低いと推測される。生成 AI プロジェクトの長期的な成功に向けて、組織はこうしたツールやプロセスの整備の課題を優先事項として早急に取り組むべきである。
生成 AI のモデルの開発からデプロイメント、保守までのライフサイクルを管理するために導入予定のプロセスやツール
サードパーティの機械学習オペレーション(MLOps)プラットフォーム
自社開発のツールとプロセス
自社が利用しているクラウドサービスプロバイダの統合ツール
プロセスやツールを導入していない/する予定がない
図9:生成 AI のモデルの開発からデプロイメント、保守までのライフサイクルを管理するために導入予定のプロセスやツール
最大の課題
生成 AI ワークロードを本番環境へ拡張する際の
既存の IT インフラとの統合
生成 AI ワークフローについて、特に重要な要素の 1 つが、モデルの精度である。調査によると、ほぼ全ての組織(99%)が、本番環境でのパフォーマンスと精度を確保するために、生成 AI モデルの監視と最適化を実施する予定だ。そのうち大半の組織が、自動化ツールを使用して継続的な監視を計画しており、組織が長期的な取り組みとしてその重要性を認識していることがうかがえる。
本番環境での生成 AI モデルを監視し、最適化するためのアプローチ
自動化ツールを使用した継続的な監視
手動でのパフォーマンスチェック
両方の組み合わせ
図10:本番環境での生成 AI モデルを監視し、最適化するためのアプローチ
生成 AI ワークロードの導入とライフサイクルについて考えるうえで、検討すべき最後の要素は、ハードウェアのサポートである。多くの生成 AI ワークロードでは、タスクの実行に、GPU、APU、TPU などの専用コンピュートリソースが必要となる。組織は、これらのリソースをクラウドサービスとして利用するか、自社のデータセンターやエッジ環境に必要なハードウェアを購入し、導入・統合するかを選択できる。また、生成 AI 用のハードウェア要件について検討する際には、サプライチェーンの制約やネットワーキングの接続性と可用性、パフォーマンス、予算だけでなく、データのプライバシー、コンプライアンス、地域要件の全てを考慮する必要がある。今回の調査によれば、生成 AI に特化したハードウェアの使用に関する具体的な計画を持つ組織は 60% にとどまった。残りの 40% は、そのようなハードウェアの導入について調査中か、調査プロセス自体を検討中であった。
生成 AI に特化したハードウェアの使用計画
生成 AI に特化したハードウェアを使用
生成 AI に特化したハードウェアを重要なワークロードにのみ使用
生成 AI に特化したハードウェアの使用を調査中
生成 AI に特化したハードウェアの使用に関して 1 年以内に調査予定
生成 AI に特化したハードウェアの使用に関して 1 年以降に調査予定
生成 AI に特化したハードウェアの使用予定はない
図11:生成 AI に特化したハードウェアの使用計画
スポットライト:DevOps 部門とエンジニアリング部門が生成 AI の導入をリード
今回の調査では、生成 AI の課題と導入に対する認識が、IT 部門の意思決定者と、プラットフォームエンジニアリング部門や DevOps 部門の意思決定者との間で興味深い相違があることが明らかになった。
自社にとって生成 AI の導入がどの程度困難かを尋ねたところ、「困難である」と回答した割合は、プラットフォームエンジニアリング/DevOps 部門では 58% にとどまったのに対し、IT 部門の意思決定者では 72% に上った。この差は極めて大きい。
さらに詳しく分析すると、生成 AI の戦略と実施に対する認識にも両者で差があり、この認識の違いが導入の難易度に対する見方に影響を与えている可能性がある。
自社の生成 AI 戦略の進捗状況はどの段階か?
戦略を策定済みで、積極的に実施している
既に戦略は策定しているが、まだ実施を開始していない
戦略の策定の初期段階である
IT 部門の意思決定者
プラットフォームエンジニアリング/DevOps 部門の意思決定者
生成 AI の実施レベルについての認識では、両者の間で 10 ポイントの差がある。生成 AI の導入についてのプラットフォームエンジニア/DevOps 部門は IT 部門よりも実施が進んでいると認識しており、この違いは、戦略的導入に伴う組織全体の課題に対する認識の相違が影響していると考えられる。IT 部門の意思決定者は、ツールと戦略を包括的に実装ることを重視するのに対し、プラットフォームエンジニアリング/DevOps 部門の意思決定者は、特定のニーズに応じて試験的にソリューションを導入しており、その実施レベルを自チームには「十分」と考える傾向がある。
このように認識の差はあるにせよ、この調査は、実際に誰がどこで生成AIアプリケーションやワークロードを実行しているかの実情について、重要なインサイトを提供している。データによると、プラットフォームエンジニア/DevOps 部門が、IT 部門の知識やサポートがなくても生成 AI を導入し、実行している可能性があることを示唆されている。
新たなアプリケーションが業界標準を牽引
第 7 回年次 Nutanix Enterprise Cloud Index(ECI)レポートで浮き彫りになった業界の大きな変化は、半数以上(54%)の組織がアプリケーションを全てコンテナ化している点である。このコンテナ化へのシフトを牽引しているのが、全アプリケーションを単一あるいは複数のパブリッククラウド上で稼働させているクラウドオンリーの組織である。これらの組織の 66% が全てのアプリケーションをコンテナ化していると回答しており、これは ECI 調査の回答者の 24% を占める。ただし、この結果は、既製のエンタープライズアプリケーションではなく、組織が独自に開発したアプリケーションのコンテナ化を反映している可能性が高い。
コンテナ化へのシフトは、新しいアプリケーションの開発に牽引され、AI の普及によって加速している。新規アプリケーションの大半がコンテナ上で構築されることからこの傾向は今後数年間続くと予測される。この傾向を裏付ける事実として、調査対象の組織の 98% が、レガシーアプリケーションまたは新規開発アプリケーションのいずれか、または両方のコンテナ化を開始していると回答している(図 1 参照)。
アプリケーションのコンテナ化の現状
全てのアプリケーションをコンテナ化している(レガシーおよび新規開発)
新規開発アプリケーションのみコンテナ化されている
レガシーアプリケーションのみコンテナ化されている
現在コンテナ化を進めている
コンテナ化の予定はない
図 1:アプリケーションのコンテナ化の現状
では、アプリケーションのコンテナ化とはどのようなもので、なぜ現代の IT 環境においてこれほど浸透しているのだろうか。一般的にコンテナ化とは、コードとその依存関係全てをパッケージ化し、あらゆるコンピューティング環境で迅速かつ確実にアプリケーションをインストールできるようにするソフトウェアエンジニアリングの 1 つのアプローチである。コンテナは、プライベートのデータセンター、パブリッククラウド、エッジロケーションなどの環境や、基盤となるテクノロジープラットフォーム、ベンダーを問わずにデプロイできる。
最新のアプリケーション開発手法において、特に「クラウドネイティブ」環境では、次のような重要なメリットからコンテナ化が広く採用されている。
- OS から抽象化:コンテナ化により、アプリケーションをホスト OS から抽象化し、移植性が向上する。
- ネットワークリソースの容易な共有: CPU とメモリ、ストレージ、ネットワークリソースの共有が容易になるため、ソフトウェアをランタイム環境から分離できる。
- セキュリティの強化:コンテナはホスト環境と分離しているため、悪意のあるコードによる侵害リスクが低減する。
- 高速:大半のコンテナが少ないソフトウェアリソースで構成されているため、従来のソフトウェアよりも実行が速く、より効率的にシステムリソースを使用する。
- 迅速なデプロイメント:効率的な管理とオーケストレーションにより、コンテナは従来のソフトウェアに比べて俊敏性が高く、迅速にデプロイできる。
15%
クラウドネイティブアプリケーションとコンテナを完全にサポートするには、現行の IT インフラの改善が必要である。
このようなさまざまなメリットから、レガシーアプリケーションでも新規アプリケーションでも、多くのアプリケーションがコンテナ化されている。ただし、それによって組織のデータ管理、ガバナンス、セキュリティの課題が解消されるわけではない。アプリケーションのコンテナ化とコンテナ管理に関して直面する課題について尋ねたところ、以下の主要な分野にわたって根強い課題があることが明らかになった(図 2 参照)。
アプリケーションのコンテナ化に関して組織が直面する主要な課題
クラウドネイティブアプリケーションとコンテナを完全にサポートするには、現行の IT インフラの改善が必要である。
クラウドネイティブアプリケーションとコンテナアプリケーションの開発は困難である。
クラウドネイティブアプリケーションとコンテナをサポートするのに必要なスキルが不足している。
図 2:アプリケーションのコンテナ化に関して組織が直面する主要な課題
アプリケーションのコンテナ化へのシフトが IT 部門に多くの課題をもたらすことは明らかだ。一連のサービスをコンテナ上で実行できるようにするためのアプリケーションの開発や分割に加えて、複数のコンテナをオーケストレーションする必要がある。オーケストレーションソリューションを導入することで、コンテナベースの管理やセキュリティ、永続性、パフォーマンスなど、データ関連の多くの課題を解決できる。
スポットライト:AI アプリケーション開発の急成長によるコンテナ化の新たな潮流
過去 2 年間で人工知能(AI)をベースとしたソリューションの開発と導入が企業の普遍的な目標になった。しかし、AI ソリューションの導入はまだ初期段階にある。多くの組織は、適切なワークロードやユースケースを見極め、最適なソリューションを決定し、新たなソリューション開発とデプロイメントに伴う予算への影響を理解しようとしている。小規模の独立したサービスの集合体としてアプリケーションを組み立て、拡張性と順応性の高い AI ソリューションを構築するアーキテクチャアプローチ、マイクロサービスを採用する組織も増えている。
コンテナ化は、多くの場合、このような新たな AI ベースのソリューションとサービス、特に生成 AI を活用するアプリケーションを迅速に構築、検証、反復するための重要な推進力となる。その理由は、アクセラレーテッドコンピューティングやライフサイクル管理のためのスケーリングなど、AI ベースのアプリケーションに必須の複雑な依存関係をコンテナ化が簡素化するからである。コンテナが提供する軽量かつポータブルなランタイム環境により、クラウドでマイクロサービスを大規模にデプロイし、必要に応じて特定のレガシーアプリケーションや他環境でサイロ化されたデータセットにサービスを迅速に移動させることができる。
すなわち、コンテナ化、クラウドネイティブアプリケ-ション、AI ソリューションの開発は全て密接に関連しているといえる。その結果、本調査の回答者の 70% が、生成 AI アプリケーションをコンテナ化するつもりであると回答しており、これは全てのアプリケーションカテゴリの中で最も高い割合となった。今後数年間は生成 AI ベースのアプリケーションの開発とデプロイメントによってコンテナ化のさらなる拡大が続くと予測される。
自社でコンテナ化しているアプリケーションのタイプは?
生成 AI アプリケーション
開発/テスト用のアプリケーション
エンタープライズクリティカルアプリケーション(データベース以外)
データベース
コンテナオーケストレーションには、コンテナのデプロイメント、ネットワーキング、スケーリング、管理を自動化するためのプロセスが含まれる。現在主に利用されているコンテナオーケストレーションプラットフォームは Kubernetes である。オープンソースプラットフォームである Kubernetes は、昨今のコンテナオーケストレーションソリューションやサービスの基礎になっている。Kubernetes のようなオーケストレーションプラットフォームが提供する機能は、上述の課題の多くに対処するのに役立つ。本調査結果では、これらのオーケストレーションソリューションが幅広く導入されていることが示されており、98% の組織が何らかの Kubernetes 環境を既に利用していると回答している。特に、約 80% の組織が複数の Kubernetes 環境を利用している点は注目すべきで、2~3 種類の環境を利用している組織が最も多い。(図 3 参照)
組織あたりに導入されている Kubernetes 環境の数
1 つ
2 つ
3 つ
4 つ
5 つ
6 つ
使用していない
わからない
図3:組織あたりに導入されている Kubernetes 環境の数
これらのオーケストレーションソリューションを強化するには、コンテナベースのアプリケーションの開発とデプロイメントをサポートするインフラの継続的なモダナイズが必要である。今回の ECI 調査では回答者の 80% 以上が、クラウドネイティブアプリとコンテナをサポートするには現行のインフラのある程度の改善が必要だと回答している。インフラのモダナイズにより、データとアプリケーションのモビリティ、セキュリティ、コンプライアンス、パフォーマンス、レジリエンスが向上し、運用が簡素化される。これらの要素は全て、要求の厳しいエンタープライズワークロードをサポートし、ハイブリッド・マルチクラウド環境全体でワークロードをオーケストレーションする際の複雑化に対処するうえで極めて重要である。
スポットライト:コンテナのデプロイメントとサポートに関する幹部レベルの期待と現実
調査結果は、幹部レベルの回答者による自社のアプリケーションコンテナ化についての認識が、その他の上級職の回答者の認識と大きく異なることを明らかにしている。ここでの最大の問題は、幹部レベルの意思決定者が、自社のアプリケーションのコンテナ化のレベルを実際よりも高く見積もっている可能性があることだ。
現在の自社環境においてコンテナ化されているアプリケーションの割合は?
全てのアプリケーションをコンテナ化している(レガシーおよび新規開発)
新規開発アプリケーションのみコンテナ化されている
レガシーアプリケーションのみコンテナ化されている
現在コンテナ化を進めている
コンテナ化の予定はない
幹部レベル
その他の上級職
幹部レベルとその他の上級職とで 12 ポイントもの差があることは重大である。アプリケーションのコンテナ化についてのこのような理解のギャップは、人材スキルやサポート能力に関する認識に起因すると考えられる。幹部レベルの回答者が、自社にはクラウドネイティブなアプリやコンテナをサポートするのに必要なスキルが全て揃っていると過信していることが問題を悪化させている。
自社環境には、クラウドネイティブなアプリケーション/コンテナをサポートするのに必要なスキルが揃っているか?
必要なスキルが全て揃っている
幹部レベル
その他の上級職
幹部レベルの意思決定者は、組織が実際に彼らの認識するアプリケーションのコンテナ化の水準を達成するために埋めるべき重要なスキルギャップを見落としている可能性がある。
主な調査結果
1. アプリケーションのコンテナ化が新たなインフラ標準に
本調査の回答者の約 90% が一部のアプリケーションをコンテナ化しており、生成 AI のような新たなアプリケーションワークロードの急速な普及に伴い、この割合はさらに増加すると予測される。実際、94% の回答者がクラウドネイティブアプリケーションやコンテナの導入が自社にメリットをもたらしていると認識しており、コンテナ化は、インフラとアプリケーション開発においてハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境でのシームレスでセキュアなデータアクセスを可能にする最適な手段といえる。
2. 生成 AI アプリケーションの導入と実装が急速に拡大
80% 以上の組織が、生成 AI 戦略を既に実施しており、戦略の計画を開始していないと回答した組織は、わずか 2% であった。ただし、実施目標は組織によって大きく異なる。多くの組織は、生成 AI の導入が生産性や自動化、業務効率の向上に役立つと考えている。現在は、生成 AI のユースケースは主に顧客サポートや顧客体験の向上に関するソリューションに集中している。しかし、組織では、今後はサイバーセキュリティやデータ保護のワークロードに生成 AI ソリューションを適用することをめざしている。
3. 生成 AI の導入に伴い、データセキュリティとプライバシーの基準の見直しが必要
回答者の 95% が、生成 AI が自社の優先事項を変えていると認識しており、特に、セキュリティとプライバシーが主要な懸念事項となっている。90% 以上の組織が、生成 AI のソリューション導入時に最優先すべき事項としてデータプライバシーを挙げており、多くの組織がセキュリティとプライバシーを生成 AI の成功に不可欠な要素と認識していることは明らかである。一方で、95% の回答者が、自社の生成AIモデルやアプリケーションのセキュリティ強化にもっと取り組む必要があると回答している。生成 AI ベースのソリューションを積極的に導入する組織にとって、従来のセキュリティ基準に加え、データガバナンスやプライバシー管理、可視性の確保などの新たな要件への対応は必須であり、セキュリティとプライバシーは今後も重要な課題であり続けるだろう。
4. 生成 AI の大規模サポートにはインフラのモダナイズが不可欠
エンタープライズ規模でクラウドネイティブアプリケーションを運用するには、セキュリティ、データの整合性、耐障害性などの要件を満たすインフラが不可欠であり、急速に進化する生成 AI アプリケーションも例外ではない。実際、ほぼ全ての回答者(98%)が、生成 AI のワークロードを開発環境から本番環境へ拡張する際に課題に直面しており、特に「既存の IT インフラとの統合」が最大の課題として挙げられている。その結果、生成 AI を支えるための最優先の投資領域として「IT インフラ」が選ばれている。
5. 生成 AI の導入には、技術と人材の両面での変革が必要
回答者の 52% が、自社の生成 AI を支えるために IT トレーニングへの投資が必要だとし、48% は新たな IT 人材の採用が必要だと回答している。多くの組織が、生成 AI 関連のスキルを持つ人材の不足や人材獲得競争の激化という課題に直面していることは明らかである。しかし一方で、多くのチームが日常業務の一環として AI 関連のスキルや能力を自然に習得し、課題を乗り越えていくと予測できる。実際、今回の調査において 53% の回答者が、「生成 AI の進化は、自分が AI の専門家になる機会をもたらしている」と前向きな回答をしている。
Nutanix は、グローバル企業におけるクラウド導入状況や、アプリケーションコンテナ化の傾向、生成 AI アプリケーションの導入状況を把握するため、7年連続でグローバル調査を実施しました。本調査は、英国の調査会社 Vanson Bourne によって、2024 年秋に実施され、世界中の IT および DevOps、プラットフォームエンジニアリング部門の経営幹部および意思決定者 1,500 名 を対象に行われました。調査対象者は、北南米(Americas)、欧州、中東・アフリカ(EMEA)、アジア太平洋・日本(APJ)地域を含むさまざまな業界、事業規模の企業です。
7 回目となる Enterprise Cloud Index(ECI)の調査結果は、アプリケーションコンテナ化、Kubernetes の導入、生成 AI ソリューションの実装に関する主要なトレンドや意思決定の傾向を明らかにしています。今回の結果では、生成 AI ワークフローに関するデータセキュリティ、コンプライアンス、インフラのモダナイズのための関連要件など、組織が直面し始めている主要な利点と課題についても深掘りしています。
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地域間の比較
地域別の傾向を見ると、北米、EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)、APJ(アジア太平洋地域)の傾向は概ね共通しており、グローバル平均とも一致している。ただし、特筆すべき地域差もいくつか見られるため、以下のテーマ別概要と表に整理した。
地域別の主要な違い - アプリケーションのコンテナ化の現状:「全てのアプリケーションをコンテナ化している」と回答した割合は、どの地域でも同程度で、52%~55% の範囲に収まっている。一方で、「現在コンテナ化を進めている」と回答した APJ の回答者の割合(16%)が他の地域に比べて高く、注目に値する。この結果から、APJ はアプリケーションのコンテナ化において、EMEA や Americas(北南米)に比べてやや遅れをとっていることがうかがえる。
アプリケーションのコンテナ化の現状
全てのアプリケーションをコンテナ化している(レガシーおよび新規開発)
新規開発アプリケーションのみコンテナ化されている
レガシーアプリケーションのみコンテナ化されている
現在コンテナ化を進めている
コンテナ化の予定はない
Americas
EMEA
APJ
図 14:アプリケーションのコンテナ化の現状
地域別の主要な違い - 生成 AI 戦略と実施の現状:APJ は、他の地域と比較すると、生成 AI 戦略を策定し、積極的に実施していると回答した割合が最も高かった。意外にも、Americas では生成 AI の導入が比較的遅れており、この地域では「生成 AI の戦略立案をまだ開始していない」と回答した割合が他地域に比べて高かった。国別の結果を詳しく見てみると、この傾向は特に米国の回答者によるもので、8% が「戦略策定を開始していない」と回答したのに対し、メキシコとブラジルではこの割合が 1 % 未満だった。
エンタープライズ生成 AI の戦略策定および実施の現状
戦略を策定済みで、積極的に実施している
戦略を策定済みだが、まだ実施していない
戦略の策定の初期段階である
戦略の策定にまだ着手していない
戦略を策定する予定はない
Americas
EMEA
APJ
図15:エンタープライズ生成 AI 戦略の策定と実施の現状
地域別の主要な違い - 生成 AI の導入による主要なビジネス目標と戦略:生産効率の向上が全地域に共通する最優先のビジネス目標となっている。トップの結果以外においては、地域ごとに若干の違いが見られる。例えば、Americas の回答者は「イノベーションの促進」が優先事項の 2 位であったのに対し、EMEA と APJ では「自動化・効率化の促進」が 2 位に選ばれている。
生成 AI がサポートする主要なビジネス目標と戦略
生産性の向上
自動化・効率化の促進
イノベーションの促進
顧客維持とサポート
運用コストの削減
従業員のオンボーディング
業界における差別化
生成 AI は自社の包括的なビジネス目標や戦略をサポートしない(できない)
Americas
EMEA
APJ
図 16:生成 AI がサポートするビジネス目標と戦略の上位
地域別の主要な違い - 生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境に拡張する際に直面する課題:Americas と APJ の回答者は「IT インフラの統合」が最大の課題として挙げており、EMEA の回答者は「スキル不足」が最大の課題であると考えている。また、EMEA において「計算リソースの制限」と回答した割合が他の地域と比べて低い点は注目に値する。これは、GPU やアクセラレーテッドコンピューティングのハードウェアやサービスの供給環境において、他の地域よりも良好である可能性を示唆している。
生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境に拡張する際に直面する課題
既存の IT インフラとの統合
AI のデプロイメントと運用に必要なスキルの欠如
所有コストや投資利益率(ROI)の可視性
規制及びコンプライアンス面の障害
計算リソースの制限
生成 AI ワークロードを拡張する際に課題に直面したことがない。
Americas
EMEA
APJ
図17:エンタープライズ生成 AI 戦略の策定と実施の現状
地域別の主要な違い - 生成 AI に特化したハードウェアの導入計画:「生成 AI に特化したハードウェアを使用」と回答した割合が最も高い結果となったのは、Americas(北南米)地域だった。一方で、全地域において、生成 AI に特化したハードウェアの使用について「調査中または調査予定」と回答した割合は同程度となった。特定の地域が明確な遅れをとっているわけではなく、世界的にみても多くの組織が生成 AI のためのハードウェア戦略を調査・計画中の段階であることがわかる。
生成 AI に特化したハードウェアの使用計画
生成 AI に特化したハードウェアを使用
生成 AI に特化したハードウェアを重要なワークロードにのみ使用
生成 AI に特化したハードウェアの使用を調査中
生成 AI に特化したハードウェアの使用に関して 1 年以内に調査予定
生成 AI に特化したハードウェアの使用に関して 1 年以降に調査予定
生成 AI に特化したハードウェアの使用予定はない
Americas
EMEA
APJ
図 18:生成 AI に特化したハードウェアの使用計画
生成 AI がデータセキュリティ戦略と関連スキルセットに与える影響
生成 AI アプリケーションとサービスは、その基盤となるデータセット、モデル、インフラと共生的な関係にある。エンタープライズはこの関係性を十分に認識しており、複雑な生成 AI ワークフローを効果的にサポートするためには、データセキュリティの強化とインフラの拡張戦略を同時に展開することの重要性を理解している。今回の調査で、生成 AI ワークロードの実装においてデータ関連の重点事項を順位付けするよう回答者に求めたところ、「データプライバシーとセキュリティ」が最も重要度が高く、次いでパフォーマンスと拡張性が続く結果となった。
生成 AI アプリケーションの導入におけるデータ関連の重点事項
アプリケーションとセキュリティ
性能
拡張性
ガバナンス
重要度はどれも同等
図 12:生成 AI アプリケーションの導入におけるデータ関連の重点事項
注:最も重要とされた回答を集計
生成 AI を実装するうえで、データのセキュリティとプライバシー、拡張性が重要であることは、今回の ECI 調査の回答者の 95% 以上が、データプライバシーは組織の生成 AI 実装において優先事項であると同意したことからも明らかである。さらに、回答者の 90% 以上が、データセンターとクラウド、エッジ環境で自社のアプリケーション全てを実行できる一元的に実行できるプラットフォームが生成 AI のイニシアチブ達成において有益であると考えている。
17%
生成 AI を実装するうえで、データプライバシーは自社の優先事項である、と回答した回答者の割合。
データプライバシーとセキュリティは、生成 AI の導入と成功において重要な要素である一方で、依然として継続的な改善が必要な領域とされている。回答者の 95% が、自社の生成 AI モデルとアプリケーションのセキュリティの強化に向けた対策は不十分だと、と回答している。このセキュリティ対策への懸念が、現行の生成 AI ワークロードやアプリケーションの活用を拡大するうえでの主な課題や潜在的な障害となっている可能性がある。
現行の生成 AI ワークロードの利用拡大における課題
LLM で秘密情報を扱うことに対する、プライバシーとセキュリティ面での懸念
生成 AI 環境をゼロから構築するうえでの複雑さと専門知識の不足
生成 AI 活用のユースケースの不足
上記全てが等しく課題である(課題となる可能性がある)
上記のうちどれも課題ではない(課題となる可能性がない)
その他
図 13:現行の生成 AI ワークロードの利用拡大における課題
注:1 位に選ばれた回答を集計
プライバシーとセキュリティに関する懸念に加えて、多くの組織が生成 AI 環境をゼロから構築することの複雑さと経験不足を重要な課題として挙げている。生成 AI に関する経験とスキルセットの不足が、回答者の 68% が生成 AI の導入は自社の課題だと感じていることの主な要因であると考えられる。
17%
自社の生成 AI のモデルとアプリケーションのセキュリティ対策が不十分である、と回答した回答者の割合。
スポットライト:生成 AI アプリケーションやワークロードの実行に必要なスキルが自社に備わっているか
2023 年の「Nutanix レポート:エンタープライズ AI の現状」では、ほぼ全ての組織が、さまざまな関連分野で高度な AI スキルを必要としていることが示された。生成 AI やデータサイエンスとデータ分析、研究・開発、プラットフォームエンジニアリング、プロンプトエンジニアリングなどのソリューションのサポートと開発リソースは限られており、競争が激化することが予測される。今回の調査では、回答者の48% が生成 AI をサポートするための IT 人材の採用に投資する必要があると考えていることがわかった。
IT と生成AI 人材に関するテーマをさらに深掘りするために、今回の調査では組織がいかに人材獲得に奔走しているのかを尋ねた。
生成 AI の導入に必要なスキルを得るために採用活動中である
生成 AI の導入に必要なスキルは既に確保できており、現在は採用活動をしていない
AI ソリューションの導入に関してスキル不足を感じているのはどの組織も同じだ。今回の調査結果から、大多数の組織が生成 AI の全般的なスキルプールを向上させるために、引き続き採用活動やトレーニング、人材投資を行っていることがわかった。
しかし、深刻なスキル不足が必ずしも障害になるわけではない。「Nutanix レポート:エンタープライズ AI の現状」では、85% が自社の AI アプリケーションを構築するために、既存の AI モデルを購入するか、オープンソースの AI モデルを活用する予定であると回答しており、自社のモデルを構築する予定があると回答したのは回答者の 10% に過ぎない。すなわち、多くの組織が予算を組み、短期的な AI スキルの不足を回避しようとしているのである。
もう 1 つの考慮すべき重要な点は、全ての AI スキルセットを社外に頼ったり、時間のかかる採用プロセスを経て人材を確保したりする必要はないということだ。多くのチームが、通常業務の一環として AI 関連の能力やスキルを迅速に習得し、組織の能力を有機的に向上させるだろう。実際、今回の調査において 53% の回答者が、「生成 AI の進化は、自分が AI の専門家になる機会をもたらしている」と前向きな回答をしている。すなわち、多くの従業員が AI の新たなソリューションを最大限に活用するために必要なスキルの習得に意欲的であり、その取り組みをサポートするテクノロジーソリューションを探している可能性もあるといえる。
調査結果から明らかになったのは、生成 AI ソリューションの導入とデプロイメントには、エンタープライズデータのセキュリティ強化と、それを支える人材のスキル向上の両面で、より包括的なアプローチが必要になるということだ。回答者の意見からも、生成 AI ソリューションの導入と成功に欠かせないデータセキュリティとデータガバナンスの基盤強化に向けた取り組みが、依然として山積していることがわかる。例えば、下記のような結果が得られている。
- 95% の回答者が、生成 AI の影響で自社の優先事項が変化しており、セキュリティとプライバシーの重要性が高まっていると考えている。
- 83% の回答者が、生成 AI の活用方法と、より広範な IT ベンダーのサプライチェーンにおいて生成 AI がデータセキュリティへ与える影響について懸念している。
- 50% の回答者が、自社の生成 AI をサポートするためにサイバーセキュリティへのさらなる投資が必要だと考えている。
- 62% の回答者のみが、セキュリティとランサムウェア対策に適切なスキルを持っていると認識している。
- 65% 以上の回答者が、データガバナンス、セキュリティ、ランサムウェア対策、データプライバシーの確保が依然として自社の課題であると指摘している。
こうした結果は、AI ベースのソリューションや生成 AI ワークロードの導入をためらう理由にはならない。それどころか、生成 AI の導入に伴うデータやセキュリティ関連の新課題に対処するために、人材やプロセス、テクノロジーへの追加投資が業務上必要であることを裏付けるものとして、本調査結果を役立てることができる。