ハイブリッド・マルチクラウド戦略による
運用の効率化

モダンエンタープライズ IT の領域では、インフラの複雑性と多様性に圧倒されることがあります。データセンターのテクノロジー、プライベートおよびパブリッククラウドへのデプロイ、およびエッジロケーションに関する選択肢が拡大の一途をたどるなかで、組織には意思決定が求められます。データ量は爆発的に急増し、何百万ものアプリケーションがオンラインで新しくリリースされ、デジタル変革の取り組みは、予算と運用の両面で新たな要求や期待に対応する必要があります。そして、これらは全て IT インフラの複雑さ、非効率性、保守コストを増大させる要因になっています。

幸いなことに、実際の解決策はそれほど複雑ではありません。現代の組織は、今日の IT インフラやコンピューティングとストレージに対するニーズの急速な変化に対応できる新たな運用パラダイムを模索しています。それは、IT 環境全体にわたる共通の運用モデル、包括的なデータ ガバナンス、IT スキルセットの最適化、状況の変化に適応してアジャイルにワークロードを配置する柔軟性などを重視するアプローチです。

このアプローチはハイブリッド・マルチクラウドと呼ばれ、適切に実行されれば画期的なゲームチェンジャーになり得ます。

ハイブリッド・マルチクラウドとは何か?なぜそれが答えなのか?

ハイブリッド・マルチクラウドは、オンプレミスおよびプライベートクラウドのデプロイ環境と、複数のパブリッククラウドプラットフォームを統合する IT 運用モデルです。ハイブリッド・マルチクラウドでは、これらの異なる環境全体を、あたかも単一の統合されたシステムであるかのように運用することができます。IT 部門は、必要に応じてデータとアプリケーションを環境間で自由に移動できます。ワークロードの配置においては、最も効果的に機能する場所を選択でき、その最適解が時間とともに変化する場合でも対応可能です。

今日では、所有する多くの環境の複雑さを軽減し、全体的なコストを削減しながら IT の俊敏性と柔軟性を高めることを目的として、ハイブリッド・マルチクラウド戦略が選択されることが増えています。ハイブリッド・マルチクラウド戦略は、オンプレミス環境とクラウド環境のメリットを全て活用し、デメリットを最小限に抑えるためのスマートなアプローチです。

ハイブリッド・マルチクラウドは、急速に IT の新しいメインストリームになりつつあります。業界調査によると、現在、エンタープライズ企業の大半が複数の IT インフラストラクチャとパブリッククラウド環境を使用していることが明らかになっています。そして、多くの場合、選択というよりも必要に迫られたというのが実情のようです。全てのワークロードにとって最適な IT 環境というものはなく、パブリッククラウドプロバイダが提供する機能やツールもそれぞれ異なります。

ただし、複数のパブリッククラウド環境を持つことと、マルチクラウドアプローチの採用は必ずしも一致しません。クラウド環境どうしがサイロ化されている場合は、リファクタリングやツール変更を行うことなく、異なるパブリッククラウド間でデータとアプリケーションを移動することはできません。ワークロードの配置は重要であり、競争上の優位性にもなり得るため、ワークロードをいつでも必要な場所に簡単に移動できるようにすることは、真の差別化要因となり得ます。

このような柔軟性と自由度は、真のハイブリッド・マルチクラウドのみが提供できるものです。ハイブリッド・マルチクラウドであれば、全てのパブリッククラウド環境が統合され、プライベートクラウドおよびオンプレミスのデータセンターとも連携できます。

ハイブリッド・マルチクラウドに必要な斬新でシンプルな IT 運用へのアプローチ

ハイブリッド・マルチクラウド戦略への移行に伴い、従来の IT 運用に対する見直しが進んでいます。組織の IT 環境はサイロ化から脱却し、一元化された環境として機能するようになっています。インフラ全体に自動化が浸透して日常のタスク処理がより効率的になり、IT スタッフの負担が軽減されています。人の介在による IT 管理の必要性が減ることで、IT チームはより革新的で収益をもたらすプロジェクトに集中できるようになります。ハイブリッド・マルチクラウドでは、クラウドごとのエキスパートの必要性も軽減されます。

ハイブリッド・マルチクラウドでは、スケーラビリティが向上します。ビジネスの急増に対応するための新しいコンピューティングリソースの作成は、IT チームによる特別な監視を必要とすることなく、迅速かつ簡単に行うことができます。

ハイブリッド・マルチクラウドは、アプリケーション開発の効率化にも役立ちます。開発者は、適切なプラットフォームを利用すれば、追加のコーディングやリファクタリングなしでどの環境でも実行可能なアプリケーションを開発できます。

IT 環境においてエッジ、データセンター、パブリッククラウドにまたがる共通の運用モデルが提供されると、エコシステム全体にわたって AI 主導型の運用と自動化を実装することが可能になります。さまざまなインフラを横断してアプリケーションとデータを実行するための標準化されたプロセスを提供する統合運用プラットフォームは、インフラのレジリエンスを高め、ハードウェアコンポーネントの障害による予期しないダウンタイムのリスクを軽減することもできます。

ハイブリッド・マルチクラウドの統合プラットフォームは、IT 運用を大幅にシンプル化し、プロセスの効率化に役立ちます。さらに、プロビジョニング、運用管理、セルフサービス、リソース割り当て、サイバーセキュリティ、データ保護、ディザスタ・リカバリなどのさまざまな機能領域にある複雑さを軽減します。

可視性がカギ

ハイブリッド・マルチクラウドでは、統合運用プラットフォームによって、オンプレミスのデータセンター、プライベートクラウド、コロケーションデータセンター、ブランチ拠点、パブリッククラウド、エッジに含まれる各環境とシステムに対する包括的な可視性が提供されます。管理者は、全てのワークロードの実行場所を把握することはもとより、ワークロードの必要性を判断したり、別の場所でより低コストに実行できないかを判断したりできる必要があります。

プライベートクラウドとパブリッククラウドのコストに対する可視性も重要です。優れたハイブリッド・マルチクラウドソリューションであれば、各環境での正確な支出をシンプルに可視化できるため、支出の予測と予算の作成がより正確になります。

適切なツールの重要性

今日、ハイブリッド・マルチクラウド管理プラットフォームには多くの選択肢があり、それぞれが独自の機能や特長を備えています。自社に適したソリューションを検討する際は、サービスの多様性、選択肢、広範なパートナーシップなど、ハイブリッド・マルチクラウドの課題のあらゆる側面に対応する包括的な運用モデルを提供するソリューションであることを確認してください。このような包括的なアプローチを採用すると、モダンなビジネスに必要な柔軟性と機敏性が実現します。

適切なソリューションを選択することが、ハイブリッド・マルチクラウドの成功への第一歩です。ハイブリッド・マルチクラウドは、モダンなビジネスにとって不可欠になりつつある IT アプローチです。オンプレミスとクラウドの環境を全て統合することで、運用の効率化、コストの削減、管理のシンプル化、ビジネスの機敏性の向上、競争力の強化を図ることができるようになります。IT 投資から最大限の成果を引き出すには、運用の効率化に向けたスマートなアプローチが必要です。