第 7 回年次 Nutanix Enterprise Cloud Index レポートの解説
執筆者:Lee Caswell
Nutanix が実施した第 7 回年次 Enterprise Cloud Index(ECI)調査は、2024 年を振り返り、生成 AI とクラウドネイティブ技術がエンタープライズ IT を根本的に変革している現状を明らかにしています。
IT、DevOps、プラットフォームエンジニアリング部門の意思決定者 1,500 名を対象に実施したグローバル調査をまとめた本レポートは、次世代のデジタル変革を牽引する 5 つの主要領域(アプリケーションのコンテナ化、生成 AI の導入、データセキュリティ、生成 AI を拡張を支えるインフラのモダナイズ、人材育成)に焦点を当てています。
まず、ECI 調査対象者の 98% がアプリケーションのコンテナ化を進行中であると回答した理由と、生成 AI のような新たなワークロードの急速な普及に対応するには、着手だけでは不十分な理由を見ていきます。
コンテナ化とクラウドネイティブアプリケーション、AI ソリューションの開発は全て密接に絡み合っており、ECI レポートはこれらの技術のシフトを反映しています。ECI 調査に回答した組織の約 90% が、少なくとも一部の自社アプリケーションをコンテナ化していると回答しています。
また、コンテナ化はアプリケーションのデプロイメントを効率化し、容易な拡張と堅牢なセキュリティを実現するため、モダン IT インフラの標準となっており、生成 AI のデプロイメントにも最適な手法とされています。実際に、本調査の回答者の 70% が、生成 AI アプリケーションをコンテナ化する予定であると回答しており、これは全てのアプリケーションカテゴリの中で最も高い割合でした。
一方で 80% の組織が、クラウドネイティブアプリとコンテナをサポートするには現行のインフラをある程度改善する必要があると回答しています。
生成 AI は単なるブームではありません。生成 AI は、急速にデジタルトランスフォーメーションの根幹となってきており、企業の業務効率化や、優れた顧客体験の創出を支えています。
ECI レポートによると、組織の 85% が既に生成 AI 戦略を策定しており、戦略立案をまだ開始していないと回答した組織はわずか 2% でした。生成 AI 戦略が普及していることから、意思決定の改善と反復作業の自動化、イノベーションの推進のために AI モデルを活用したいという喫緊のニーズがあることがわかります。
では、企業は生成 AI をどのように活用しているのでしょうか?生成 AI のユースケースは多様で、その数も拡大しています。
生成 AI は急速に普及し、イノベーションの中心的存在となりつつあります。しかし、生成 AI モデルとデータの両方を保護することは新たな課題を生み出しており、組織はエンタープライズグレードのレジリエンスと Day2 運用、コンプライアンス要件を満たす生成 AI 環境を構築する必要があります。
生成 AI は変革を促進する一方で、データセキュリティの強化とプライバシーの保護という喫緊の課題をもたらしています。ECI レポートによると、生成 AI を導入するうえでの最大の懸念事項はデータプライバシーとセキュリティであり、30% の回答者がこれを最も重要な課題としており、次いでパフォーマンス(23%)と拡張性(22%)が挙げられています。
こうした懸念にもかかわらず、95% の組織が、自社で生成 AI モデルのセキュリティを確保するための対策が不十分であると感じているのが実情です。回答者の 38% が、社内データを大規模言語モデル(LLM)で活用するうえでのプライバシーとセキュリティのリスクを懸念しています。また、31% がセキュアな生成 AI 環境をゼロから構築することの複雑さを指摘しています。
幸いなことに、企業はこうした課題に対処に必要な領域に投資しています。回答者の半数がサイバーセキュリティやデータガバナンスへの投資が必要だと認識しており、53% は生成 AI をチームのスキルアップの機会と捉え、将来的には AI のエキスパートになることをめざしています。
生成 AI を拡張するうえで、セキュリティの強化と秘密データの保護は引き続き企業にとって重要な投資領域となっています。AI が主導するビジネスの新時代において、モダンインフラと専門知識への投資が、リーダー企業となるカギといえます。
生成 AI ワークロードの拡張は容易ではなく、特に既存の IT システムと生成 AI が求める特殊な要件とを統合する場合は困難です。今回の調査で、98% の回答者が生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境に拡張する際に課題に直面していると回答したことは驚くに値します。生成 AI ワークロードを開発環境から本番環境に拡張する際に組織が直面する課題として最も多かった回答の割合は、既存の IT インフラとの統合(54%)でした。
これは、生成 AI ワークロードに必要なインフラが、従来のエンタープライズワークロードに必要なインフラと比べて要求が厳しいためだと考えられます。生成 AI ワークロードには、高性能コンピューティング、高スループットストレージ、低遅延ネットワーキングが必要で、さらにセキュリティとデータの整合性も維持も求められます。
また、生成 AI モデルのライフサイクル管理にも課題があります。79% の組織が今後、生成 AI モデルの開発から本番までのライフサイクルの管理プロセスを導入予定であるとしている一方で、多くの組織が遅れをとっているのが現実です。生成 AI のライフサイクル管理に関しては、組織はいまだ計画段階であり、52% がサードパーティの MLOps プラットフォームを利用予定、48% が自社開発のツールを計画しており、21% は「生成 AI モデルのライフサイクルを管理するためのプロセスやツールを導入していない/するつもりがない」と回答しています。
生成 AI 拡張を成功に導くカギは、生成 AI をデプロイと継続的な稼働を支える DevOps 部門とエンジニアリング部門にあることもわかりました。
生成 AI の急速な普及は、テクノロジーの変化だけでなく、労働力のシフトももたらしています。熟練した AI の専門家への需要は極めて高く、52% の組織が生成 AI に関連した IT トレーニングの必要性を認識しています。しかし、新たな人材の採用を検討する組織は 48% にとどまっています。
人材不足は現状の問題であるものの、多くの組織が身近な解決策を見つけています。85% の企業が自社の AI アプリを構築するために既存の AI モデルを購入するか、オープンソースの AI モデルの活用を計画しており、ゼロからモデルを構築する必要性を回避しています。自社で独自モデルを構築する予定である組織は 10% にとどまっており、大半の企業にとっては既製の調整可能なソリューションが活路となっていることがわかります。
さらに、AI の専門知識を全て外部人材の雇用に頼る必要はありません。多くの企業が内部人材のスキルアップが生成 AI 能力を伸ばすうえで有効な手段であることに気づいており、ECI 調査の回答者の 53% が生成 AI の進歩は従業員が AI エキスパートになる機会を与えてくれると考えています。
すなわち、人材不足は克服できない課題ではありません。既存のチームのスキルアップや外部ソリューションを活用し、戦略的雇用に注力することで組織は生成 AI のスキル不足を埋めることができます。
生成 AI は一過性のトレンドではなく、ビジネスの未来を形成する要素です。生成 AI がワークロードやインフラ、人的資源の各戦略に与える変革的なインパクトにより、組織はあらゆる戦略の再考を迫られています。クラウドネイティブアーキテクチャからセキュリティフレームワーク、人材管理において、新たなアプローチとデジタル変革が必要とされています。
生成 AI の導入に真剣に取り組む組織が実行すべきこと
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