AI 市場の進化:AI によるデータとインフラの変革

Nutanix レポート:エンタープライズ AI の現状」から得た 6 つの重要なインサイト

かつては SF の世界に過ぎなかった「人工知能(AI)」は、今やビジネス技術の革新を牽引する中心的存在となっています。俊敏なスタートアップから大規模なグローバル企業に至るまで、AI をデジタル変革の次なる最前線として活用し、これまで以上の優位性を実現することが期待されています。

エンタープライズ IT における AI の活用状況を把握するため、Nutanix は、英国の調査会社 Vanson Bourne に委託し、世界中の IT、DevOps、プラットフォームエンジニアリング部門の意思決定者 650 名を対象に、 AI 技術の戦略と導入についての調査を実施しました。本調査レポート「エンタープライズ AI の現状」では、AI の導入状況や課題、そしてこの革新的技術の今後の展望を明らかにしています。

1. AI の導入は拡大する一方で、まだ初期段階である

調査対象となった企業の AI への関心は極めて高く、実に 90% の企業が AI を優先事項としています。しかし、AI 統合への道のりには多くの不確実性が伴います。戦略的なベストプラクティスや確立されたフレームワークがないなか、多くの企業は、自社の AI ワークロードに最適な IT 環境や、ビジネスニーズに適した AI アプリケーションの特定に試行錯誤しています。

AI を現代のビジネス運用に適切に組み込むには、AI の現在の利用方法と今後の進化について知っておく必要があります。本レポートによると、企業は主に生成 AI を活用した動画・テキスト・画像アプリケーションを導入し、仮想アシスタントやカスタマーサポート機能を強化しています。これに続くのが、不正検知、サイバーセキュリティ、画像・音声認識、コンピュータービジョンなどの AI ソリューションです。

デプロイメント環境では、プライベートクラウドやオンプレミスのデータセンター環境を選択する傾向が顕著です。データの局所性に関する考慮事項、規制コンプライアンス、パフォーマンス指標などが、こうした選択に影響を与えていると考えられます。さらに、基盤となるコンピューティング環境では、仮想マシン(VM)とコンテナの双方にバランスよくAIアプリケーションがデプロイされており、多様な IT 環境で AI が活用されていることがわかります。

2. AI が IT のモダナイズとデータモビリティの要件を牽引

AI の膨大なデータ需要に対応するには、企業が一貫したデータ戦略を持ち、セキュアでアクセスしやすい効果的なプロセスやワークフローを確立する必要があります。調査対象のほとんどの回答者(91%)が、拡大するデータ要件を満たすには、AI ワークロードをサポートし、スケールできる IT インフラのモダナイゼーションに長期的な投資が必要だと回答しています。実際に、回答者の 85% が、AI ワークロードをサポートするために、今後 1〜3 年間で IT インフラのモダナイゼーションへの投資を増やす予定であるとしています。

しかし、AI ワークロードをサポートするには、データセンター、クラウド、エッジ環境間でシームレスなデータ移動が不可欠であり、これにはコストがかかります。多くの企業が既にハイブリッド・マルチクラウド IT アーキテクチャへの移行を進めている一方で、分散型エッジの導入は比較的遅れています。しかし、状況は変わりつつあり、93% の企業が AI 戦略を支えるためのエッジ戦略の導入を検討し、83% が今後 1~3 年でエッジ戦略への投資を拡大する意向を示しています。

ここで優位に立つのは、いち早く取り組むアーリーアダプター企業です。とはいえ、多くの企業が AI を支えるインフラのモダナイゼーションの重要性を理解している点は前向きな傾向といえます。それでも、インフラの設計やデプロイメントには依然として課題が残っています。実際に、多くの企業が AI インフラやアプリケーションのアップグレードを検討している一方で、回答者は、データセキュリティ(53%)、インフラのレジリエンスとアップタイム(52%)、大規模なインフラ管理(51%)、インフラの自動化(50%)など、主要な推進要因が何であるかを明確に理解しています。

チャット AIチャート

3. AI スキルの不足は依然として懸念事項:投資は進んでいる

あらゆる技術の進化には、新たなスキルが求められるという課題が伴います。生成 AI のような AI テクノロジーに対する関心は高まっている一方で、そのメリットを最大限に引き出すには、組織がどのような能力やスキルを従業員に求めるべきかを見極める必要があるため、時間がかかると予測されます。

実際、84% の企業が、今後 1〜3 年でデータサイエンスおよびエンジニアリングチームへの投資を増やすことを計画しています。企業が注目している主な分野は、生成 AI とプロンプトエンジニアリング(45%)、データサイエンス・データアナリティクス(44%)であり、これらは今後 1 年以内に必要とされる AI スキルの上位 2 分野として挙げられています。

もう 1 つの注目すべき調査結果は、回答者の 90% が AI アプリケーションを構築する際に既存の AI モデルを購入するか、既存のオープンソース AI モデルを活用することを検討しており、自社で開発する予定であると答えたのはわずか 10% だったことです。多くの企業は、既存のモデルを活用することがリソースを最大化し、市場投入までの時間を短縮する最善策であると考えています。

4.サステナビリティと ESG は AI においても主要なテーマである

ESG が現在、企業にとって極めて重要な課題であることは間違いありません。調査対象の回答者もこれに同意しており、ESG レポーティングを AI スキルの開発が必要な重要な分野として位置付け、研究開発や製品開発よりも上位に位置付けています。

このことから、ESG が優先事項となるなか、企業はレポートを改善し、規制やコンプライアンス要件を遵守し、さらには IT 運用を最適化するための効果的な方法を模索しているということがわかります。企業は、この目標を達成する手段として、AI の効果的かつ責任ある活用を考えており、AI アルゴリズムやワークロードが必要とする計算リソースや GPU が大量のエネルギーとリソースを消費することを認識しています。

5. データセキュリティ、データ品質、データガバナンスは依然として重要な課題

データの領域では、セキュリティは依然として大きな懸念事項です。このことは、レポートからも明らかで、回答者は AI ワークロードの実行や計画において、データセキュリティとデータ品質を最も重要な考慮事項として挙げています。文脈を踏まえると、コストが 10 位に留まっているのは妥当といえます。AI アプリケーションとサービスは、データ、モデル、インフラに依存しており、これら全てを保護する必要があります。

また、データガバナンスも、企業が AI テクノロジーに求める重要な要素の上位にランクされています。今後、AI ツールはデータガバナンスを「後回し」にするのではなく、最も重要な位置に引き上げることが予想されます。その理由は簡単で、AI は一貫したデータアクセス、品質、スケーラビリティに依存しているからです。これにより、あらゆる AI ワークロードにおけるデータ保護とセキュリティの重要性が強調されています。

不良コードチームミーティング

6. コストの障壁が顕著化し始める

レポートによると、多くの企業にとって AI 導入の初期段階は、最先端技術としての期待が優先され、コストが問題視されにくい傾向にあり、「ハネムーン期間」に似ているといえます。しかし、このハネムーン期間は永遠に続くわけではなく、既に 90% の企業が AI アプリケーションの活用により日々の IT・クラウド支出が増加すると認識しています。

今後、AI も他の IT 投資と同様に厳格な財務管理の対象となる必要があります。特に、IT 予算がこれまでのように潤沢ではない状況を考えると、その必要性はさらに増します。この差し迫ったシナリオは、AI のコストを正当化し、最適な TCO を実現できるインフラオプションを特定し、長期的な AI 投資を戦略的に計画することの必要性を強調しています。

エンタープライズ AI の導入は長期的な取り組み

AI 導入の道のりは革新を前提としたものである一方、明確なゴールが定まった旅ではありません。インフラに関する意思決定おいて、現時点で正解や不正解を断言するのは時期尚早です。

AI は単なるツールではなく、業界を変革するちからとして台頭しており、企業の中核戦略や業務と密接に結びついていることは明らかです。本調査結果は、AI の成熟には資金投資だけでなく、インフラの選択、人材育成、そして長期的な戦略の見極めが不可欠であることを示しています。

成功するエンタープライズは、AI を単に導入するだけでなく、AI をビジネスの根幹に組み込み、その可能性と課題の両方を的確に理解する企業です。AI 時代の幕開けとともに、企業はこれまでにないイノベーションと変革の岐路に立っています。