仮想ネットワーク向けソリューションとしてNutanix Enterprise Cloud OSを選定
通信サービス業界
「今までIIJのクラウドで構築していたサービスを、その他のクラウドで使えるのか確認してみたいと考えていました。個別のお客様向けシステムには3層構成は検討せず、構成がわかりやすく、スケールアウトしやすいNutanixに決めていました」
「お客様から運用を請け負っている個別案件だけに、充実したNutanixテクニカルアカウントマネージャ(TAM)による支援のおかげで安心してサービスの提供ができています」
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は、日本で初めての国内インターネット接続事業者として1992年に創業し、日本におけるインターネットのパイオニアとして業界を牽引しています。インターネット接続サービスをはじめ、WANサービスおよびネットワーク関連サービスの提供、ネットワーク・システムの構築・運用保守、通信機器の開発および販売などを手掛けており、革新的な技術を標準化することで多くのネットワークサービスを世の中に送り出しています。また、同社が有する日本最大規模のバックボーンネットワークを生かしながら、高度な運用技術やネットワーク監視技術を駆使して高品質な接続サービスを提供しており、IaaSを中心に運用マネジメントを含めた自社クラウドサービス「IIJ GIO」をはじめ、ネットワーク仮想化を実現するSDN / NFV技術を駆使した「IIJ Omnibus」、SOCによる統合運用管理も含めたセキュアな環境を提供する「wizSafe」など、ビジネスに必要不可欠な機能をクラウド上から提供するさまざまなソリューションを手掛けています。
同社では、以前から自社クラウドのII J GI Oにて仮想基盤を整備し、顧客が要求する性能や要件に応じたマネージドVPN機能を提供していましたが、個別の顧客向けに特別な環境整備が必要な案件が発生しました。システムクラウド本部 クラウドサービス3部 部長 宮崎 直樹氏は、「数万の拠点に対して、VPNを経由してリアルタイム通信や定期的な大容量データの配信を行う環境整備が必要になりました。当初はIIJ GIOをベースに提供することを検討しましたが、配信ごとに大きなトラフィックが発生するため、他のお客様との共用部分の多いサービスではなく、今後のことも踏まえ、専有環境が最適と考えました」と説明します。以前からIIJ GIOにて導入・運用していたVPN機能をNutanixが提供する基盤でも導入することを計画しました。拠点数の拡張なども視野に入れると、個別環境での展開のほうが将来的にも安定した環境が提供できると考えたといいます。
新たな環境構築にあたって柔軟な基盤づくりが可能なNutanixに目を付けました。「会社として実績はありましたが、我々のチームではNutanixを扱った経験がありませんでした。今回計画していたVPN基盤としての仮想ネットワークサービス以外にも、お客様の環境にはさまざまなシステムが存在しています。シンプルな構成のNutanixであれば横展開しやすく、スケールアウトが容易なことから活用の幅も広がると評価しました」とプロフェッショナルサービス第一本部 プロフェッショナルサービス1部 1課 課長代行 吉川 雄介氏は説明します。
「ストレージが大量に必要な環境ではなかったため、共有ストレージの新たなサイロを持たずともNutanixで必要な環境が整備できると考えました。また、数万の拠点に配信するため、従来型の物理アプライアンスに全て収容してしまうとトラブル時の影響範囲が大きくなってしまう恐れもあり、小さなノードでクラスタを構築して冗長性を担保し、切り替えができるNutanixのほうが耐障害性の面でも優れていると判断しました」と宮崎氏は語ります。
そこで注目したのが、Nutanix Enterprise Cloud OSでした。「Nutanixは、VMwareよりも機能面が充実していながら、シンプルに使えるという印象を持ちました。特に今回は仮想ネットワークの基盤としての限定的な用途のため、簡単に運用できるソリューションを求めていました。シンプルな機能で理想的な環境が整備できるNutanixを高く評価しました」と宮崎氏は話します。安定した基盤を長期的に活用したいという顧客の希望に個別対応可能な提案がNutanixからあったことも大きなポイントの1つだと語ります。
比較検討の結果、顧客の求めるVPN機能を実装した仮想ネットワーク基盤となるホステッドプライベートソリューションとして、Nutanix Enterprise Cloud OSの導入が決定しました。
現在は本番および検証環境として展開する10台の物理ノード上で、VPN装置の仮想アプライアンスおよび配信サーバーを1セットとして50VMほどが稼働中で、一部の拠点に向けたサービス提供が実施されており、最終的には数万拠点への配信を行う仮想ネットワークソリューションとして展開していく計画です。通常は各拠点とのリアルタイム通信が発生しますが、大容量データの配信は週に1回程度、各拠点からのアップロードも含めて双方向の安定通信を担う仮想ネットワークの基盤を構築することに成功しました。
一部サーバーのサイジングやネットワーク環境といった基盤構築における設定の違いはあるものの、アプリケーション領域は以前からIIJ GIOで運用してきたものと同様の環境が実現できています。「基盤さえ構築できれば、あとは従来通りの運用が可能になっています。違いを意識せずに運用できるのは現場にとってもありがたい」と吉川氏はいいます。今回は特定顧客向けのフルマネージドのVPN基盤として、安定した運用が実現できており、現場のエンジニアからも違和感なく運用できていると評価の声が寄せられています。「導入後、安定稼働しており、何のトラブルも発生していません。お客様からのクレームがないということがお客様から一定の評価を得られていることの裏付けと言えるでしょう」と吉川氏は評価します。
同社にとって、特定顧客向けの環境にNutanixを採用することは初めての試みでしたが、Nutanixに関する知見が得られたことも効果の1つに挙げています。「まだ全ての環境の運用が開始されていないこともあり、大きなトラブルは発生していません。トラブル時のサポート体制がどれだけ充実しているのか、フェイルオーバーがどれほど容易なのかなど、何かあったときに多くのノウハウが得られるため、その段階でさらなる知見を蓄積し、他の環境にも展開していけるかどうかを見極めていきたいです」と吉川氏は語ります。また、宮崎氏も「私は主に導入部分での関与でしたが、Nutanixの採用実績ができたことで、他の案件でも採用しやすい社内環境が構築できたと言えます。この環境をさらに広げていければと考えています」と述べています。
構築に関しては、Nutanixテクニカルアカウントマネージャ(TAM)により、計画通りにプロジェクトを進めることができたといいます。「我々だけで運用することもできますが、機器の故障やログの詳細な解析など、急な対応が必要な場面も出てきます。特に今回はNutanix初体験のエンジニアが運用に携わっているため、手厚いサポートが不可欠でした。お客様から運用を請け負っている個別案件だけに、充実した支援のおかげで安心してサービスの提供ができています」と吉川氏は語ります。日頃のサポートについても、リモート環境からWeb会議ツールなどを用いて画面共有しつつ緊密なコミュニケーションが行われており、Nutanixの充実した支援体制を高く評価しています。
標準的なサービスとして提供しているIIJ GIO を軸として、個別対応が必要な顧客向けのソリューションが確立できたことから、「今後は、ホステッドプライベートソリューションの1つとして、案件ごとに対応が必要な場面での有力な選択肢の1つとしてNutanixを活用していきたいと考えています」と吉川氏は期待を寄せています。
今回の案件ではVMware ESXiを基盤として採用していますが、NutanixのハイパーバイザーであるAHV活用の可能性もあるといいます。宮崎氏は「さまざまなお客様のご要望に応えるための手段として、Nutanixが提供するソリューションには興味を持っています。現状のハイパーバイザーは頻繁にバージョンアップがあり、その手間とリスクを最小限におさえたいという希望もあるため、ハイパーバイザーのライフサイクル運用次第ではNutanix AHVも候補となりえます」と今後の展望について語って下さいました。