クラウドでBCP対策とVDI環境を整備
医療業界
Nutanix Enterprise Cloud OS
「戦略的M&Aの結果、サーバーが全国に点在していたこと が悩みの種でしたが、プライベートかパブリッククラウドかを 意識することなく、1つの画面上で管理が可能なNutanixに 短期間で集約できたことで、グループ全体でシステムのBCP 対策が実現できました」
「外部委託で数日かかっていたリカバリ処理を内製化し、 2時間で復旧でき、大幅なコスト削減もできました。今まで の運用は何だったのかと思うほどの衝撃です」
「Nutanixにインフラを集約し、作業の簡素化、運用の自動 化ができたことで管理業務などの守りの業務から脱却し、 事業継続性の向上、DaaSおよびDRaaSソリューションの導入 など攻めのITに注力することが可能となりました」
オルバヘルスケアホールディングス株式会社は、2021年に創業100年を迎えた医療機器の総合商社です。中四国および東北、近畿地域を主要な営業エリアとし、ペースメーカーや人工関節といった医療器材を販売する医療器材事業、院内物品管理システムなど情報技術を活用して医療材料を効率的に提供するSPD(Supply Processing and Distribution)事業、介護用電動ベッドや車椅子などをレンタルで提供する介護用品事業を展開しています。同社は、積極的に医療関連企業のM&Aを行いながら事業拡大を続けています。
2013年に40台ほどあった物理サーバーを3層構成上の仮想環境に移行したことをきっかけに、仮想化への取り組みを始めました。しかし、3層構成環境は拡張のハードルが高いことや予算の都合で、段階的なシステム刷新が行われ、仮想基盤を活かしきれず、各システムインフラがサイロ化し、管理部門の作業負荷が高まっていました。「導入するベンダーが複数社あることや保守の制約もあり、サーバー基盤をシステムとセットで導入せざるを得ない状況が続いていました。混在した環境のため、運用管理に手間と時間がかかっていました」と管理本部 情報グループ 課長 相坂 年宣氏は当時を振り返ります。また、常務取締役 管理本部長 村田 宣治氏も「経営側としてもM&AとITシステムを一緒に考えるのは難しく、買収後にどう統合していくかは長年の課題となっていました」と説明します。
このような課題を抱えるなか、「3層構成環境ではパフォーマンスが十分に発揮されておらず、増設時の負担も大きかったため、2013年に導入した仮想基盤の保守切れに合わせて新たな基盤導入の検討を始めました」と管理本部 情報グループ 係長 石井 翔氏は語ります。
新たな環境では、従来の仮想環境で利用してきたVMware vSphere上で運用できること、増設が容易であり、ストレージに依存せずパフォーマンスを発揮できること、そしてハードウェア更新も負担なく実施できることを重視しました。
BCP対策の観点からも、当初は全ての実行環境をクラウド上のIaaS上に展開することを検討したものの、基幹システム内のデータベース(DB)をクラウドに移行してしまうと保守とコスト面での課題が多いと感じていました。アプリケーションサーバだけをIaaSに移行した場合、DBが遠隔地になることでセキュリティ管理とレスポンスの遅延が懸念されました。そのため、将来的なパブリッククラウド環境への移行も視野に入れつつ、当面はDMZ(非武装地帯)だけをクラウド 環境に展開するハイブリッド構成を念頭に検討を進めていきました。
ハイブリッドクラウドが最適解と考え、Nutanix Enterprise Cloud OSの導入を検討しました。「パブリッククラウドの場合、数年後のコストの見通しが立てづらく、投資決裁する側としても決断ができませんでした。Nutanixであれば、コスト面でも十分我々の要求に合致すると考えました」と村田氏は導入の背景を説明します。「容易に拡張できるアーキテクチャであるだけでなく、必要な場合は縮退することも可能な仕組みは画期的でした。また、データはノード間で多重化されるものの、データローカリティ技術によって、ローカルのディスクにきちんとデータが保持されることで読み込みが早くなるため、ストレージの遅さに悩む必要がなくなる点はとても魅力的でした」と石井氏は評価します。さらに、誰にでも運用しやすいシンプルな管理インターフェースにより、運用の属人化を回避できることもNutanixを選定したポイントの1つとして挙げられています。
2013年の仮想環境の移行以来、Nutanixを中心にサーバー統合を進めており、 バックアップクラスタにNutanix AHVをハイバーバイザーに採用しました。業務支援システムや物流システムをはじめ、同社が基幹システムとして位置付けている販売管理システムも含めて段階的に移行し、仮想化が困難な数台のサーバーやSaaSを除き、全ての仕組みがNutanix上で稼働しています。Nutanixへの移行により、複数のデータセンターおよび社内のサーバールーム上にあった6ラックほどの環境が、すべてデータセンター内に設置され、わずか1ラックに集約することに成功しました。
「1年ほど運用するなかで信頼性の高さを実感し、基幹システムを仮想環境へ移行しました。DBの待ち時間が約半分になるなど、体感できるほど動作が高速になり、正直驚きました」と石井氏は効果を説明します。Nutanixに切り替えたことで、バックアップがNutanixのノード内で実施できるようになり、担当者だけで必要な時点の環境に素早く復元できるようになりました。「以前は外部委託に数百万円を支払ったうえで、リストアに2日ほどかかっていたものが、内製化してわずか2時間程度で復旧できるようになりました」と相坂氏は話します。
M&Aを積極的に行っている同社にとって、事業会社同士のシステム統合は重要な要件の1つです。Nutanixへの移行により、システム統合の負担軽減に期待を寄せています。「基盤が容易に拡張できるため、システム統合も迅速に実行できます。医療業界でここまで先進的なIT投資を行っている企業は少なく、インフラの移行や統合が迅速に行える点は、大きな競合優位性になっています」と村田氏は高く評価します。
新たな試みとして、Prism Proに実装されたリソース最適化機能X-FITによってVMに関する異常や非効率な状況を可視化しています。また、タスク自動化機能X-Playにより、一時的にメモリ不足などが発生した場合は自動的に増設ができるほか、CPUの高負荷時にはアラートメールを送信するといった能動的な取り組みも実現できています。「業務時間内はシステムを停止できないため、リソース有効活用のための解放作業は深夜に実施せざるを得ないケースもありました。自動化の機能は運用する立場からすると本当にありがたいです」と石井氏は評価します。
Nutanixに移行できていたことで、新型コロナウイルス感染拡大に伴うリモートワークの期間中もシステム管理のために出社が必要だったことは一度もなく、リモート環境から問題なく運用できたといいます。
現在は、バックアップクラスタに導入しているAHVを活用し、VDI機能を提供するXi Frameを検証しており、稼働に向けて準備を進めています。「現在のコロナ禍においては、どこからでもデスクトップにアクセスできる環境を用意しておく必要があります。Xi Frameにより数年ごとに発生するPCの更新における作業負荷も軽減できると考えています」と村田氏は言います。
また、同一ラック内にバックアップクラスタが存在しているため、BCP対策の強化として遠隔地へのデータ移管も求められており、遠隔地でのバックアップが可能なXi Leapの稼働に向けて準備を進めています。「医療器材を提供しているため、我々の仕組みが停止してしまうと病院の機能に影響が及ぶ可能性があります。事業継続はグループにおける最重要課題であり、Xi Leapによって万全の態勢を整えることができると考えています」と村田氏は力説します。
また、社内で利用しているDBに関しては、OSのバージョンアップに都度対応するなど、工数が嵩んでいることから、DBaaSソリューションのNutanix Eraの検討を進めています。それにあわせて、同一筐体内に統合しているグループの基盤に対するセキュリティ対策として、マイクロセグメンテーションを実現するNutanix Flowの導入も検討しています。現状稼働しているVMwareの環境をAHVに切り替えることでコストメリットが大きいことを考慮し、将来的にはAHVの導入も視野に入れているといいます。「次の100年に向けてDXのさらなる推進が求められています。Nutanixの新たなソリューションも含め、積極的なIT投資を今後も推進していきます」と村田氏は語ります。