企業
代理店販売を中心に、保険の専門家による対面販売やインターネットを活用した通信販売などさまざまな販売チャネルを駆使し、多くの顧客に死亡保険や医療保険、がん保険などを販売。なかでも医療保険「新キュア」を中心に高い支持を受け、新契約件数は2 0 1 3年度から3期連続で5 0 万件以上と、2016年5月には保有契約件数全体で300万件を突破するまでに急成長を遂げている。
業界
生命保険業界
ビジネスニーズ
- 契約件数の伸びにも柔軟に対応できるインフラ構築
- リソースのプール化によるプラットフォーム戦略を加速
- 自前主義への展開が必要
導入製品
Nutanix Enterprise Cloud Platform
NX-1000, 3000, 6000, 8000シリーズ
(50ノード以上)
ソリューション
VMware ESXi
導入メリット
- アプリケーションおよび運用から基盤を意識しない環境を実現
- ノード追加によるリソースのプール化
- 運用可用性を確保
- オペレーションコストも含めておよそ6割程度のコスト削減を実現
- テクノロジーの陳腐化を防ぐことにつながる
導入の背景
オリックス生命は1991年にオリックスグループの生命保険会社として営業を開始しました。代理店販売を中心に、保険の専門家による対面販売やインターネットを活用した通信販売などさまざまな販売チャネルを駆使し、多くの顧客に死亡保険や医療保険、がん保険などを販売しています。なかでも医療保険「新キュア」を中心に高い支持を受け、新契約件数は2013年度から3期連続で50万件以上と、2016年5月には保有契約件数全体で300万件を突破するまでに急成長を遂げています。
一般的に生命保険を中心とした保険商品は、終身で契約するのが基本。そのため、それら保険商品の仕組みを支えるITインフラのライフサイクルは、短くても30年は必要となります。「過去の保険商品を運用し続けるために、古い資産を持ち続ける必要があります。その多くはメインメインフレームで管理しているのが実態」と保険会社が運用するインフラの特殊性について常務執行役員 菅沼重幸氏は語ります。ハードウェアのライフサイクルは5年程度とみられているIT業界にあって、保険会社のITライフサイクルは数十年という長きにわたる運用管理が求められるのです。
そんな保険業界にあって、同社は新たなプラットフォーム構築に取り組んでいます。「以前からリソースをプールできる柔軟なプラットフォームを検討してきました。これはもはや時代の要請であり、そうしないと今後インフラが耐えられなくなる」。元々IT業界でR&D分野に身を置いていた菅沼氏だけに、目指すべきインフラの姿を明確に持っていました。
ソリューション
理想のプラットフォーム構築を可能とするソリューションの登場を待ち望んでいたオリックス生命。その後、Nutanixが提供するエンタープライズクラウドプラットフォームに出会いました。「インフラが本当の意味でインフラになるためには、柔軟性が必要です。その意味で、キャパシティプランニングを物量としてプールで管理できるようにならないといけないという考え方を持っていました。そこに、ぴったりはまったのがNutanixです」。
ただし、リソースをプール化したプラットフォームを構築するためには、企業側が戦略を持ってアプローチする必要があると菅沼氏は力説します。「リソースのプール化には、すべてのアプリケーションをインテルアーキテクチャ (IA)で動かすということを念頭にプラットフォーム戦略を描く必要があります。インフラをサイロ化させるような動きは避けなければなりません」。実際、菅沼氏がオリックス生命保険に入社した2012年から、アプリケーションの更改があるたびにSolarisやAIXで稼働させていたアプリをできるだけIAに乗せ、オープン系のLinuxかWindowsで稼働させるよう転換してきました。
そんな折にNutanixを知った菅沼氏は、ちょうどSIEM (Security Information and Event Management) 製品SplunkのインフラとしてNutanixの採用を決断します。その中で評価していたのは、SDS (Software Defined Storage) の拡張性や企業としてのスピード感です。「我々が考えるプラットフォーム戦略に大きな影響を与える機能の追加をNutanixに要望を出したところ、開発サイドですぐに対応いただきました。技術的にはもちろん、コンセプトを実現していく力、推進力にも感心したことを覚えています」。これがきっかけとなり、将来的なプール化を見据え、Nutanixをベースにインフラ整備に取り掛かることになりました。
IT戦略プロジェクト推進部 マネジャー 池田純二氏も、システムがサイロ化していくなかで運用コストが積み上がっていく現状を目の当たりにしてきました。「保険の契約件数の増加と共に、システム開発案件も目白押しでした。従来のサイロ化した状況から脱却し、プールからリソースを切り出せるようなインフラデザインにできないかと考えていました」と語ります。そんな折、社内にてイベントログを収集してセキュリティ強化につなげるためのSIEMを実装することになり、Nutanixを採用しました。「ログ収集のため、ストレージが柔軟に拡張できることが重要でした。Nutanixであれば拡張しやすく、まさに今後のプール化を進めるうえでの試金石にできると考えました」と池田氏。実際に使ってみると、HDDとSSDの配分も最適な形で利用でき、パフォーマンスも十分要件を満たしていました。
「インフラが本当の意味でインフラになるためには、柔軟性が必要です。その意味で、キャパシティプランニングを物量としてプールで管理できるようにならないといけないという考え方を持っていました。そこに、ぴったりはまったのがNutanixです」
オリックス生命保険株式会社 常務執行役員 菅沼重幸氏
導入効果
SIEMでの導入を皮切りに、マイナンバーや直販ビジネスアプリケーション基盤の仕組みをはじめ、現在ではコールセンターのオペレータが利用する「コールナビ」、ワークフロー機能を提供するイメージワークフローなど、既存プロセスを再構築した仕組みもNutanixで構築したプラットフォーム上に展開しています。さらに、これまで紙で運用してきた保険の申込書や設計書などの仕組みも、Nutanixを活用してペーパーレス化を実現するプロジェクトを進めています。「Nutanixにて構築したリソースプールは、理想に近いプラットフォーム」とオリックス生命では評価しています。
なお、個人情報などクリティカルな環境が求められる本番環境については、Nutanixのエンタープライズクラウドプラットフォームを活用していますが、アプリケーションの開発検証環境にはAWSやMicrosoft Azureなどパブリッククラウドを柔軟に活用、時間単位での払い出しで効率的なクラウド活用を行っています。
現在実施されているリソースのプール化により、これまでサイロ化した形で個別に運用してきた環境に比べて、オペレーションコストも含めておよそ6割程度は削減できたと池田氏は語ります。「以前は業務ごとに運用管理の仕組みやサーバー環境を用意せざるを得ず、委託ベンダも異なっていました。Nutanixに集約化したことで、大幅なコスト削減につながっています」。さらに、Nutanixではノードを入れ替えるだけで、技術の陳腐化を防ぐことができるため、ライフサイクル管理の容易性を実現しました。
この環境を実現するためには、ベンダに丸投げする環境から脱却し、自前にてWebアプリケーションなどの開発を行っていく自前主義への転換が必要でした。「市場の変化が激しい中、今後出てくるアジャイル開発にも対応できる環境づくりが必要です。そのためにも、ベンダに委託する部分と自前で取り組む部分をしっかり意識していくことが大切です」。
なおNutanixについては、管理ツールであるPrismに対する使い勝手の良さや開発に対するスピード感を高く評価していると池田氏は語ります。「GUIを用いて簡単に設定や運用管理でき、とても使いやすい」。また、世の中のテクノロジーのトレンドに合わせた技術開発が行われている点についても評価しています。「NutanixのOSをバージョンアップすることで、新しいテクノロジーの恩恵を享受することができるのは大きなメリット」。
今後の展望
オリックス生命は今後、既存業務で利用しているハードウェアの更改で新たなリソースプール上にシステムを集約していけるよう、その準備を十分に行っていきたいと考えています。「社内の照会システムや銀行窓販システムなども新たなプラットフォームに集約していく計画です。2011年に構築した新契約のシステムも更改を控えているため、Nutanixへの展開を予定しています」。最終的には、インフラをインビジブルなもの、意識しなくて良いものにしていきたいと菅沼氏は意気込みを語ります。また、契約数の伸びや移行するシステムによってノード数を追加していきながら、同時にDRサイトの構築も行う予定です。また、現状運用しているメインフレームについても、徐々にオープン系に移行する考えです。なお、現状はハイパーバイザーにVMware ESXiを採用していますが、いずれはNutanixのAHV (Acropolis Hypervisor) などの活用も視野に入れていると語ります。
これから保険業界は、健康状態が測定できるヘルスケアデバイスなどのセンサー技術を駆使することで、保険料を変動させていくような商品も考えていく必要があるとオリックス生命は見ています。「従来のウォーターフォール型のプロセスで開発していたら、稼働までに数年かかかるでしょう。当局の許可が下りる前提で、すぐに実装できるような環境づくりはインフラとして重要です。今回構築したリソースプール型のプラットフォームは、そんな場面にも生きてくるはず」。迅速なビジネス要件にも対応できる基盤として、Nutanixのエンタープライズクラウドプラットフォームが同社のビジネスを今後も下支えしていくことでしょう。
Nutanixは、ITインフラストラクチャーをその存在さえ意識させない「インビジブル」なものに変革することで、企業のIT部門が、ビジネスに直結したアプリケーションやサービスの提供に注力できるようにします。Nutanixのエンタープライズ向けクラウドプラットフォームは、オンプレミスのインフラストラクチャーの特性である優れた予測性能やセキュリティそして管理機能とともに、パブリッククラウドが持つ俊敏性と経済性そしてシンプルな運用性能を提供します。Nutanix のソリューションは、Webスケール技術とコンシューマーグレードなデザインによって、サーバー、仮想化機能、そしてストレージを、耐障害性能に優れたソフトウェア・デファインドなソリューションとして統合することで、あらゆるアプリケーションをどのような規模でも稼動させることができます。